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2016年3月13日 (日)

マタイ受難曲 聖トーマス教会合唱団

11日と12日、トマーナコアとゲヴァントハウス管弦楽団によるマタイ受難曲を聴きに行きました。2日続けて行ったので、印象が消えずに残ってよかったと思います。

11日は東京芸術劇場でしたが夢倶楽部の招待で2階席C列、12日はミューザ川崎で1階席3列目。状況が違うのでそれぞれに良さがありました。2階席からはステージがすべて把握でき、ステージ両端の電光掲示板も無理なく目に入るので歌詞の翻訳がリアルタイムでわかります。でも距離があるのでステージ世界を俯瞰するような感じで、一体感には欠けてしまう。ミューザ好きの自分としては、今回も満足していますが、前方の席からは電光掲示板が視界の外なので、翻訳は手元でプログラムを見ていました。

    

まず最初の印象は、ステージに現れたトマーナの上級生たちがなんとスタイリッシュだこと!スーツ姿がすがすがしくて見とれてしまいます。

リュート奏者の方は白髪のロン毛で、長いトマーナの歴史の奥から出てきた800年前の演奏家のよう。そして第一バイオリンのコンサートマスター氏は、吟遊詩人の趣がありました。

指揮者の前にはリュートとビオラ・ダ・ガンバ。その後ろにハープシコード。指揮者の左右にバイオリンなどの弦楽器、バイオリンの後ろにはオルガンがあります。後方はフルート、バスーン、オーボエなどで、オーケストラの後ろにトマーナのボーイズと兄様たちが並んでいました。

11日のコンサートでは2階席だったので、ステージ全体が見渡せましたが、0.6+乱視の自分には、表情までは読みとれない・・・。ミューザではボーイズはオケの間から見え隠れの状態です。結局団員たちの識別率はゼロでございました。いいの、今回は音楽が優先です。

キャスティングは、福音史家:マルティン・ペッツォルト、バリトン:クラウス・ヘーガー、フローリアン・ベッシュ、ソプラノ:シビッラ・ルーベンス、メゾソプラノ:マリー=クロード・シャビュイ

テノールのベンジャミン・ブルンスさんは体調不良のため、今回は2日間ともペッツォルトさんが福音史家とテノールの2役を演じられました。

    

始まりの音はいつも感涙です。 前日の夜も聴いていた弦楽器の低い音が、目の前から聞こえてきました。この音をずっと待っていたのです。

福音史家は柔らかいテナーで好きな声でした。抑揚のある歌声は宗教的ではないかもしれませんが、私には心地よいものでした。

これまでウィーン少年合唱団で聴いてきたアリアが大人の歌声で聞えてくる。第8曲の「Blute nur,du leibes Herz!」 12曲「Wiewohl mein Herz in Tränen schwimmt」、13曲「Ich will dir mein Herze schenken」 ですが、その状況にもじきに慣れました、さすがに女性歌手のソプラノは絶対感があります。

少し気になったのは、2階席で聴いていたとき、たま~にソプラノ歌手の声の周波数がオケの音に埋もれてしまうように感じたこと。やはり近い席で聴いたほうがいいのかもしれませんね。全体にミューザでうける印象は、目の前でリュートのポロ~ンという音に耳を傾け、聴き語りのような気持で臨めたこと。その雰囲気がよかったと思います。

合唱は時に愚かな民衆の声、時に正義を訴える声、あるいは芝居のト書きのような役割もあるんですね。ステージの華はソリストにありますが、要所要所に入る合唱の絶妙なタイミングに驚かされます。

合唱隊は左右ふたつのブロックに分かれています。長い待ち時間があるときは席についてます。それでよけいに客席から彼らの顔が見えないのです。第20曲から29曲まではずっと右側のブロックが歌っていました。

第27曲はイエスが捕らえられた場面です。ソプラノ、アルトとのデュエットが本当にきれいでしたが、その旋律を裂くように合唱が「Lasst ihn放せ、halter待て binder nicht縛るな」と入ります。CDを聴いていたときからすごいなと思っていた箇所でした。一瞬の狂いもないそろった声が必要です。

第一部の最後第28曲はフルートの重唱が素敵です。繰り返されるハーモニーが何かを予感しているよう。きれいだけど不安にかられる音です。

第二部の始まりは、胸に迫る弦楽器の響きと静かなアリアでした。

33曲の福音史家のあとにプログラムではアルト、テノールⅡと書いてあります。これは私の勘違いでなければ、トマーナの兄さんたちが歌っていたはず。後ろのほうから高めの声できれいなハーモニーが聞こえてきたと思います。・・・まあ、勘違いかもしれないですが。

35曲のあとでガンバ、リュート、オルガンの演奏でテノールのアリアが歌われました。いずれの楽器も古風な音色でよかったです。他の演奏を見るとハープシコードを使うこともあるようですが、今回のアレンジは好きですね。

そのあと、第36曲の途中から38の途中まで動画がありました。トマーナの演奏で、38曲では女中が登場して証言するシーンがあります。歌うのはソプラノのボーイズですよ。埋め込み無効なので、こちらのurlから直接ご覧ください。

https://www.youtube.com/watch?v=9wWynOjoLm0

コンサートでもステージ後方からソプラノが聞こえてきました。メガネをかけた少年が立って歌っていましたが、見えにくかったです。

そして39曲のバイオリン演奏は誰もが心を持っていかれる所ですね。Breuningさんは吟遊詩人のようだと最初に書きましたが、やせた体を揺らしながら風貌だけでなく演奏する姿も詩人です。受難曲なのにこれほど美しい旋律でいいんですか?と思ってしまう。

続くアルトアリアも、本来のアルトよりは高い声質ですが、それが私には良かったです。

42曲のバイオリンソロもいい。女性でYun-Jin Choさん。彼女はBreuningさんとは対照的で姿勢よく勢いがある印象。バスのアリアとともにアップテンポの曲を力強く演奏しました。

第49曲はこれもウィーン少のソプラノで聴いていた「Aus Liebe」 愛ゆえにわたしのイエスは死のうとしている・・・という悲痛な内容です。実は今まで言葉の意味まで考えたことはなく、この機会に翻訳を知って本当によかったと思います。

やがて第61曲でイエスがEli Eli~と叫ぶシーンから、ストーリーは終章に向かっていきました。よく宗教画で十字架からおろされるイエスと泣きくれる人々の構図がありますね。あのような場面です。

終曲は悲しみに満ちてはいますが、深い安らぎも感じます。

「憩え安らかに。安らかに憩いたまえ」

演奏が終わった後の、わずかな静けさ。そのあとの大きな拍手。鳴りやまぬ拍手の渦。

ミューザの小じんまりした内部は、熱気と拍手の勢いとで異常な圧がかかったような感覚になりました。一人でテノールと福音史家を歌いきったペッツォルトさんを抱擁する指揮者のゴットホルト・シュバルツ先生。二人を見て一段と大きな拍手が起こりました。

何度かカーテンコールをして、最後にはトマーナのソロメンバーたちもステージの前に一列に並んでくれました。やっとボーイズの顔も見ることができました。さらに先生に連れられて出て来た少年は一番年少さんでしょうか? 小さくて消え入りそう。でも彼も2年後3年後には立派な団員になるんですね。

    

聖書の中の一幕をこの目と耳で体験できたコンサートでした。

いつかまた機会があったら必ず聴きに行きます。ヨハネもぜひ生で聴いてみたいと思っています。トマーナコアの皆さん、ゲヴァントハウス管弦楽団の皆さん、素晴らしいマタイを聴かせていただき感謝します。

できればトマーナコアの団員だけの歌も聴いてみたいですね。蘊蓄なしの単純に美しいコーラスを聴いてみたい。

    

マタイの終曲ですが、トマーナのこの部分だけの動画はなかったので、キングスカレッジです。

  • 曲番号とかドイツ語とか、誤りがあるかもしれません。CDとプログラムをつきあわせて確かめたつもりですが、実は一度書いた記事がエラーで消えてしまい、二度も書いたのでちょっと疲れたレビューになりました。にわか仕込みであんまりわかってない。ただ単純に感動したのです。それだけお伝えできれば良いのです。

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コメント

おはようございます。
私はトーマス教会のコンサート9日11日12日と3回行きました
maaさんの感想が素晴らしくて...私、あんまり上手く言葉で表現できませんが、本当に感動しました。

マタイの受難曲はCDとインターネットの動画で聴いたことがあるくらいで、詳しくありませんが、日本の教会でも聖餐式に歌われる賛美歌(136番)が歌われて(歌詞は違いますが)少し身近に感じました。

神様の愛と自分自身の罪に対する苦しみ、悔い改め、イエス様の十字架の贖いによる救われた喜びなど、思い巡らしながら聴いていました。

マタイの福音書をあのような音楽で表現できるなんて素晴らしいと思いました。

また次の来日公演のときも是非行きたいです。

具合悪くなってしまった子大丈夫かなと心配ですこれから韓国公演もありますよね?
守られるといいなと思います。

あの...間違っていたらすみません。
maaさんもしかして川崎公演の後にご一緒させていただいた方でしょうか?

投稿: まりこ | 2016年3月14日 (月) 08時40分

まりこ様 こんにちは
土曜日はありがとうございました。まりこさん、可愛らしいお方で驚きました。
聖書を読まれるのなら、なおのこと感動されたでしょう。

私にとっても初めてライブで聴くマタイでした。
感情的にはなるまいと思っていましたが、やはり翻訳を知って聴くと伝わるものも大きく涙を禁じえませんでした。
トマーナの生徒たちにとってはこれが日常なんですね。
バッハを歌うために入学して世界中に出かける。子供のうちからすごいことだと思います。
ステージにソリストたちが並んでくれてよかったですね。きりっとして素敵な少年たちでした。
今日も寒かったですが、これだけ天候にも変動があると、団員の方たちも体調管理が難しいと思います。
回復しているといいのですが。
15日16日は韓国公演だそうです。
無事にコンサートを成功されますように。

投稿: maa | 2016年3月14日 (月) 19時12分

おはようございます

やっぱりmaaさんでしたか!
先日はこちらこそありがとうございました
優しく接して下さって嬉しかったです。
...可愛らしいなんて...とんでもないです
maaさん可憐で素敵な方だと思いました

トーマス教会のコンサート、そうですね。聖書を日ごろから読んでいるので、余計に感情的になってしまいます。

団員たち本当に素敵でした
小さな子には3時間の公演とハードスケジュールはきついと思いますが、頑張っていて偉いなと思います。

今日明日が韓国公演なのですね。
コンサートが守られるようにお祈りしたいです。

投稿: まりこ | 2016年3月15日 (火) 07時15分

まりこ様 
韓国公演もきっと大丈夫です。大陸のほうが気候的にはライプチヒに近いのではないか・・・と想像しています。

今トマーナのFBに上がっているYoutube動画は1985年の日本公演です。福音史家P.シュライアー、そしてバリトンは昨年カントールを辞任されたビラーさんです。まだお若く素敵な歌声ですね。
トマーナの学校生活のDVDで南米公演のときに、信者にとってもそうでないひとにとっても深い意味のある内容ですと、ビラーさんが生徒たちに言ってきかせていた姿を思い出しました。その意識がこれからも引き継がれると良いと思いました。

またコンサートでお会いしましょう。
5月1日は柏でウィーン少の公演がありますね! ちょっと近くて嬉しい。

投稿: maa | 2016年3月15日 (火) 21時21分

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